 一ツ物神事は曽根天満宮秋季例大祭において最も重要な神事である。10月13・14日の両日とも氏子中曽根・伊保・東西阿弥陀の４町から格一人ずつ選ばれる。一ツ物とは、祭礼に特別の扮装をして馬又は肩車に乗って登場する児童のことで、当社では青・赤・黄などの裾長の狩衣を着て、山鳥の羽を立てた花笠をかぶる。手には中啓（扇）を持ち、額に｢八｣の字を描いている。他に行列には御幣・尾花・傘・刀などが付属する。一ツ物の言葉の由来については定かではないが、｢万一の事故があっても他に変わることのできない唯一のもの｣という意味と思われる。祭りの基本は、神々をお迎えして神饌をお供えし、神と人が饗宴を共にしたのち再びお送りするという形式をもっていた。その中で一ツ物は目に見えない神様の姿を具現化しており、祭りの期間中一ツ物頭人には神様が憑依し、その子供が無意識に発する言葉を神の意志として受け取っていたようである。そのため一ツ物は馬に乗せたり、肩車をして地面に足をつけないように大切に扱われる。当社の祭礼には一ツ物とは別に行事と呼ばれる児童が登場する。一ツ物が山鳥の羽を頭につけ、尾花を持っているのに対し、行事は烏帽子に浄衣（白い狩衣）を着けていて、判然と区別されている。一ツ物が神の意志を告げたとすれば、行事が聞き取り役であったと推察される。 |
